撮 影
カメラマン|根岸 功
記 事
増木工務店|山口愛莉沙
Kenchiku
Story
山形県米沢市。
生まれ育った故郷にスタッフ山口が建築した自邸です。
どこを向こうか。
米沢市は山形県南東部に位置する置賜盆地。360°山々に囲まれている町です。計画地は、南側道路に接道した300坪の土地。敷地の向かえ側は米沢市の農業振興地域になっており、田園風景が広がります。さらに、その先には吾妻連峰を望むことができる場所です。小さな平屋は、吾妻連峰を望む居場所づくりから始まりました。
米沢は四季がハッキリしていて、春夏秋冬、風景•音色•空気が変わります。地元で暮らしていた時には当たり前だったことが、当たり前ではなかったと気がついたのは埼玉に上京してからでした。
気がついたからこそ、その地域の魅力を暮らしの中に取り込み、目の前にある自然と一体となる家にしたいと思いました。
小屋みたいな、小さな家。
18歳で上京してから10年以上、増木で建築に携わらせていただいています。
地域工務店がつくる家に魅了され、自社の建物だけでなく、全国の工務店さん、建築家の皆さまの建物を見学させていただき、ドキドキ・ワクワクの建築に触れてきました。
中でも、20歳の時に訪れた建築家・中村好文さんの展覧会「小屋においでよ!」で出会ったHanem Hut は、小屋から家へという考え方、エネルギーの自給自足にワクワクしたのを今でも覚えています。それから9坪ハウスなど、小さな住宅に興味を持ち始めました。
その一方で、30坪•35坪の家をスタンダートとして、広さや部屋の数、窓の数など間取りが優先され、肝心の耐震や断熱、環境への配慮が見捨てられた住宅が量産され、地域の土と緑がコンクリートとアスファストで埋め尽くされていく光景も沢山見てきました。
やたらと高い天井、光を取り入れるだけの窓、過度な照明設備など、意図することなく設けられた余分なものはすべて削ぎ落し、今の自分に「必要十分」であり、未来の汎用性がある家をつくろうと思いました。
1.5間×1.5間(2.73m×2.73m)の□を8つ並べた、18坪の居住空間。それが私にとって必要十分な大きさでした。
小さな家ですが、地震を考慮した耐震性能と、雪国でも毛布1枚で眠れるほど暖かい断熱性能、年月を重ねるたびに経年変化を楽しめる素材、太陽の光と熱を利用した電力自給率100%のエコな暮らしなど、たくさんの幸せが詰まった幸福度の高い住まいになりました。
半分外、という選択。
ずっと憧れていた薪ストーブや、生涯の相棒として選んだ車のガレージは絶対!という希望もあり、居住空間の隣に同じく1.5間×1.5間(2.73m×2.73m)の□を4つ並べた、半外•外空間を設けました。
高性能化する居住空間は必要十分で、遊び心を満たしてくれる半外空間をプラスすることで、家と外の中間領域ができて、米沢の四季をより一層楽しめる住まいになりました。
家が高断熱化し、建築コストも上がっている中で、断熱区画内に本当に必要な空間なのか?という疑問を持つようになり、半分外という選択肢もあるのではと思いました。結果、その選択が暮らしを豊かにしてくれることもあるのだと実感しました。
本物の素材に囲まれる心地よさ、深呼吸したくなる空気環境、もしもの時の備えがしてある安心感。どれも、贅沢品ではなく、今できる私たちの最大限を未来のために取り組みました。2050年のスタンダート目標とされている「LCCM住宅」の認定を米沢市で一番はじめに取得した、小さな、小さなエコハウスです。
他にも、書き綴りたいことはたくさんありますが、長文になってしまいまそうなので、ストーリー・性能・素材・エネルギー・庭などそれぞれの分野に分けて、これからクラシコラムでご紹介していきたいと思います。
撮 影
カメラマン|根岸 功
記 事
増木工務店|山口愛莉沙
Kenchiku Date
設計監理
(株) 増木工務店
網代建設(株)
木造平家建て
996.24㎡(301.36坪)
建物性能
耐震性能
耐震等級3|許容応力度計算実施
断熱等級7|HEAT20 G3|UA値0.2W/㎡•K
断熱性能
気密性能
竣工時測定結果|0.3 ㎠/㎡
構 造
テクノストラクチャー工法
断熱仕様
屋根断熱 |ネオマフォーム240㎜
壁吹込断熱|セルロース105㎜
壁付加断熱|ネオマフォーム100㎜
103.63㎡(31.34坪)
2023年|注文住宅
建物仕様
屋 根
ガルバリウム鋼板 竪ハゼ葺き
外 壁
米沢杉板張り
開口部
アルス夢まど 木製窓
床 材
米沢杉 無垢フローリング
室内壁
内装用モイス貼り
天 井
板張り|エアリライト