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築43年•想いと時間を紡ぐ家

2022年|リノベーション

性能向上リノベ デザインアワード2022 優秀賞受賞

​撮 影

カメラマン|しだらまさひろ

記 事

増木工務店|山口愛莉沙

​Kenchiku
Story

今回リノベーションした住まいは、この家の建主の息子さんより売却相談をいただいたことから始まりました。建主で住まい手だったお父さんは、43年前にこの家を建築して以来ずっと住まい続けて来られましたが、今回止むを得ず手放すことをご決断され、売却のご相談に至りました。お父さんは、建築当初からこの家への想い入れが強く、定期的にメンテナンスをしながら手を加えられて来ました。


「この家はしっかり造ったから、できたら誰かリフォームをして住んでほしい。」

当初、築43年と聞いて「解体して更地にしなければ売却は難しい」と回答をした私たちですが、後日売却予定の建物を見に行ったところ、43年前の建物とは思えないしっかりとした構造躯体と施工に驚きました。建物はシンプルなデザインで、現代の家と比較しても見劣りしないものでした。

「この建物だったら」と、耐震改修•断熱改修を含めた性能向上リノベーションを計画し、この家に住んでくれる買主を探すことにしました。



「この建物だったら」と、耐震改修・断熱改修を含めた性能向上リノベーションを計画し、この家に住んでくれる買主を探すことに。




買主が決まり、インフィル解体へ

ただ見た目を綺麗にして暮らすリノベーションではなく、これまで43年間お父さんの暮らしを支えてきた家を、これから新たに20年•30年と住み継いでもらうために、まずは建物の根幹である【耐震】と【断熱】の性能を向上させる性能向上リノベーション工事をスタートしました。


建物は、シロアリ被害、雨漏れ被害もなく、とても綺麗な構造体でした。一度このスケルトン(構造体のみ)状態になったところで、建築計画が予定どおり実施できるかの詳細検討と、耐震改修検討を行いました。




1世帯住宅を大人4人が暮らす、2世帯住宅へ。

住まいの性能向上を検討すると同時に、これまで1世帯で住まわれて来た家を、今度は2世帯へプラン変更することになりました。元々1階部分は半分がガレージでしたが、一部を居室に増築することで1階•2階で分離する2世帯住宅のプランを検討しました。



元々は正面西側に玄関があり、1階は水回りと客間、ガレージ。2階がメインの居住スペース。新しい住まい手さんは、ご高齢のご家族もいらっしゃった為、これからの介護生活も視野に入れてガレージ内へ玄関を移して、雨風を気にすることなく車に乗り入れできるようにしました。


2階では大人3人が暮らします。それぞれのプライバシーを確保しながら、将来ライフスタイルが変化した時にも対応できるよう、内部の間仕切り壁はできる限り構造壁を無くした耐震改修を検討しました。




小さなエネルギーで快適に暮らす

昔の住まいは、大きな窓が多くどの部屋も明るいのは良いのですが、断熱性能を向上させるには窓が沢山あるのはマイナス要素になってしまいます。そのため、新しいプランでは見せたい景色と閉じたい景色を選別して、窓の数とサイズを絞り、全ての窓を樹脂窓へ入れ替えました。




断熱ラインは、基礎•外壁•屋根で断熱気密処理を行い、小さなエネルギーで暮らせるようエアコンは床下エアコンと、ロフトの壁付けエアコンの2台で全館賄います。各部屋の温度が一定になるように、日射遮蔽や空気の流れを検討しました。





暖かい空気は下から上へ、冷たい空気は上から下へ動くのを利用し、吹き抜けの位置やエアコンの設置位置を設計します。(上図:断面図参照)小さなエネルギーで快適に暮らせる家は、ランニングコストを抑えることができるのはもちろんですが、家中の温度が一定であることは、そこで暮らす人の健康にも大きく影響します。お財布に優しく、健康に暮らせる。とても嬉しい住まいです。



外観デザインは、15年前に以前の家主さんがパワーボードへ張り替え工事をしていたこともあり、既存のパワーボードはそのまま活かして一部を板張りにすることで可愛らしい印象に。43年前でもシンプルにデザインされた住まいは、少し手を加えてあげることで並びの新築住宅に見劣りしない外観デザインになりました。





新築以上の価値をつくる

リノベーション住宅と新築住宅の一番の違いは「時間と思い出」があるか、だと思います。リノベーション住宅は、これでまでに歩んできた時間があり、そこで暮らしてきた人たちの想いが詰まっています。この家も、建主•お父さんがとても想い入れのあった家でした。インフィル(内装)を解体するのも、心苦しいところがありました。このリノベーション工事が完成した時、お父さんが見てきたこの家の風景をどこかに残すことができないか…。




そこで、以前階段の手すり子で使われていた材を削り、磨いて、大工さんの加工により、階段手すりへと生まれ変わらせました。普段の生活の中で一番手に触れる手すり。43年の時間に触れるには一番良い素材だと思い、カタチにさせていただきました。



以前、みんなが集まる部屋だった台所と居間の入口の開戸に組み込まれていたガラス。

毎日家族を迎え入れていたこのガラスは、これからも家族を見守ってくれるようにと各部屋の入口建具に灯り窓として組込みました。


竣工後、どんなふうに家が生まれ変わったのか、建主のお父さんが足を運んで来てくださりました。以前の面影を残しながらも、新しく生まれ変わったこの住まいを心から喜んでくださり、これまでの43年の時間と、これからの刻まれていく時間を紡ぐことができました。

一見価値が薄れてしまったように感じる古いモノも、見方や考え方、手の加え方によっては、これまで以上に価値あるものへ生まれ変わることができる。それは、家も、家具も、道具も同じように思います。この性能向上リノベーションは、建主である以前の住まい手、そこから暮らしのバトンが渡された新しい住まい手、そのバトンを紡いだ増木工務店、みんなが幸せになるリノベーション工事でした。



■関連記事|クラシコラム「大工の手による家具再生」


 

メディア掲載

・2023-11-20 リフォーム産業新聞掲載

・2023-10-01 住まいとでんき10月号執筆

・2023-08-10 だんno.16掲載

・2023-08-01 性能向上リノベ StyleBook 掲載

・2023-07-22 リノベーションジャーナル Vol.18 掲載

・2023-03-16 性能向上リノベ デザインアワード2022 優秀賞受賞

​撮 影

カメラマン|しだらまさひろ

記 事

増木工務店|山口愛莉沙

Kenchiku Date

​設計監理

(株) 増木工務店

(株) 増木工務店

木造2階建て|2世帯住宅

154㎡|46坪

​建物性能

​耐震性能

耐震最高等級3相当|上部構造評点1.55

断熱等級6|HEAT20 G2|UA値0.45W/㎡•K

​断熱性能

気密性能

竣工時測定結果|0.8 ㎠/㎡

​構  造

木造在来工法

​断熱仕様

屋根断熱 |セルロース120㎜

壁吹込断熱|セルロース105㎜

127㎡|38坪

2022年|リノベーション

​建物仕様

​屋 根

ステンレス鋼板 竪ハゼ葺き

​外 壁

ALC|秋田杉板タテ張り

​開口部

YKKap APW330

​床 材

あづみの松 無垢フローリング

室内壁

オガファーザー貼り 無塗装

​天 井

クロス貼り

​施工管理

建物種類

敷地面積

​延床面積

竣工•建築場所

OUR WORKS

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