イイナたてもの
2024年11月19日
記事|
Arisa Yamaguchi
建築家・宮脇檀設計 <那須の別荘 ヴィラ福村>
建築家・宮脇檀さんが設計した「那須の別荘<ヴィラ福村>」。
その佇まいが象徴的で一目見ただけでワクワク・ドキドキ。いつか見れる機会があったら見に行こうと思って数年、ようやくその時が来ました。
現在のオーナーである、福島・郡山と栃木・宇都宮を拠点にインテリアショップを運営させれている有限会社NON VERSUSさんのイベントに参加して、待望の建物見学へ。
1974年に竣工した<ヴィラ福村>
コンクリートの打ちっ放しと木構造が組み合わされた、その建築を目の前に息を呑んでしまいました。
50年前に竣工した建物とは思えないほど丁寧に手入れされ、二代目のオーナーに引き継がれて建物が生き生きとしているように感じました。
NON VERSUSの田中さんにご案内いただき、ヴィラ福村の建て主である福村さんとのお話や、この建物を購入してから行ってきた改修工事のお話、この建物の見どころを細部までご説明いただきました。
コンパクトな住まいではありますが、それぞれの居場所が心地よい距離感で繋がっていて、とても素敵な空間でした。
夏の気持ち良い風の流れや、冬の暖かい空気の流れが空間構成とともに設計されており、すべてのディティールに意味があるように感じました。
建物の価値
このヴィラ福村の二代目オーナーになった当時のお話もお聞きしました。
福村さんがこの土地と建物を手放すことになった時、地元の不動産屋さんには「建物は壊さないと売れない」と言われたそうです。「そんなはずはない」と、この建物価値を理解してくれる不動産屋さんへ再依頼して、NON VERSUSの田中さんが引き継ぐことになったそう。
築50年とは言え、建築家の建物でも扱う人によっては建物価値がゼロになってしまうことがあるということには、胸が痛みました。この建物が、その価値を理解して、引き継いでくれる人に出会えたことに心から嬉く思いました。
50年経った今でも、色褪せないデザインと、経年美化している素材、ちょうどいいコンパクトさ。私たちが今つくっている住まいも、そういう住まいでありたいと改めて感じました。
元々、700坪の敷地にポツンと佇んでいた<ヴィラ福村>。今はNON VERSUSさんのオフィス棟、ショールーム棟も建設され、この場所は「offesso(オフィッソ)」と名付けられています。
イベント当日は、CARL HANSEN & SONのスタッフさんによるデンマークの生活や家具のお話をうかがい、Yチェアのメンテナンス実演も見せていただきました。
「家具も住まいと一緒で引き継ぐもの」デンマークでは当たり前。
それに比べて日本の当たり前の基準ってどうだろう、何を優先して選択するのが豊かな暮らしになるのだろう、と改めて考えさせられる時間でした。
オフィス棟、ショールーム棟も素敵な建物で、魅力たっぷりのヴィンテージ家具が展示されていました。聞いたことはあるし、知ってはいるけれど、深堀りしたことのなかったイームズやウェグナーなどの名作椅子の世界。
また魅力的な世界を知って、足を踏み込んだ一日でした。
目を養い、手を練れ
宮脇檀さんの言葉の通り、良いものを見て手で触れて、学び続けることを忘れずに、学んだことを建築の実務でアウトプットできる人間でありたいと思います。