自然と温熱環境
2023年7月4日
記事|
髙木 恭子
土や緑、自然素材の大切さ
性能数値では測れない快適性
10年前に建築させて頂き現在オーナー様よりお借りしているコンセプトハウス「トコみど」は、秋オープンに向けて準備を進めておりますが、100坪の敷地にある畑や庭木のある暮らしを少しでも体感したいと考え、スタッフが日替わりで滞在し、お庭と住まいのお手入れをしながらリモートワークをしております。
そんな日常で改めて思うことは、この家には性能の数値だけでは測れない心地よさや、経年の美しさがあることです。
まず、トコみどの玄関引き戸をガラガラと開けると、夏でもひんやりとした空気と木の香が漂い、どこか懐かしくほっと癒されます。梅雨時でも不思議と空気がさらっとしているのです。
私は、増木工務店に入社する以前に残念ながら新建材の家を購入してしまい、トコみどと同じくらい(約12年)の月日が経ちますが、1日中締め切った家の玄関を開けると未だにビニールクロスと新建材で使用された接着剤のにおいが鼻につきます。
建築基準法でホルムアルデヒドの含有量は制限されており、仕上表を見ても最も少ない量(F★★★★)のクロスですが接着剤のにおいはとれません。
そして、靴を脱いで床にあがりシャッターを開けると、格子戸からやさしい光が桜のフローリングを照らし、2つと同じ柄のない木目が輝きます。米ぬかのオイルで丁寧に磨かれた床は新築した時よりも色艶が増して美しく、空間に落ち着きを与えてくれます。それは柱や建具、壁に使用されている自然素材も同じで、数値や写真では伝えきれない心地よさがあります。
増木工務店のスタッフは皆、建物に興味のあるスタッフばかりで、お客様に自然素材や住まいの性能の大切さを夢中でお話しているのですが、実際に暮らしたことがないスタッフも多く、新築現場で米ぬかオイルを塗ったり、やすりで削ったりして木に触れる程度なのです。
せっかくお借りする事のできた素敵な住まいを大切に守り、自然素材が経年美化していく様子や、春夏秋冬変化する庭木など沢山のことを体感して、私たちの住まいづくりコンセプトをお伝えできるようになればと思います。