街づくりレポート
ケヤキファミリア 土地の記憶を受け継ぐ街づくり

新座市に完成した賃貸戸建住宅「ケヤキファミリア」。
2026年6月に竣工を迎えました。
100年後の子ども達に、この風景を残したい。
オーナーの想い

一度この場所を離れてみて、気が付きました。
木々がつくる木陰、季節ごとに表情を変える庭、鳥の声が聞こえる暮らし。都会ではなかなか味わえない心地よさが、ここにはありました。
一方で、時代とともに少しずつ変わっていく景色も目にしてきました。
土地が細かく分けられ、住宅が建ち並び、昔からの面影が少しずつ失われていく。親世代だけが住み続ける地域では、人のつながりも以前ほど感じられなくなってきました。
そんな風景を見ながら、ふと考えたのです。
「この景色や暮らしを、100年後の子どもたちへ残すことはできないだろうか。」
その想いだけはありましたが、当時は何をすればいいのか分かりませんでした。

転機となったのは、家族が所有する賃貸アパートの建て替えを考え始めたことでした。
建築家の友人との出会いをきっかけに、土中環境を大切にする造園屋さん「みどり縁」、今回の総合企画を担当した「チームネット」、新座市で環境と向き合う「増木工務店」のみなさんと繋がり、このプロジェクトが動き始めました。
振り返ると、本当に多くのご縁に支えられてきたと感じています。
風景は、人が育てる。
総合企画:チームネットの甲斐さんが語る

このプロジェクトは、単に賃貸住宅を建てる計画ではありませんでした。
始まりは「この豊かな環境を次の世代へどう受け継いでいくか」というオーナーの想いから。
敷地には、長い年月をかけて育まれてきた大きな欅や庭木、季節の草花があります。こうした環境は、一度失われると簡単には取り戻せません。
では、どうすれば未来へ受け継ぐことができるのでしょうか。
私たちが大切にしたのは、「人が関わり続ける仕組み」をつくることでした。
生物学者・福岡伸一さんは、「動的平衡」という言葉で生命を表現しています。私たちの身体は、細胞が絶えず入れ替わりながらも、同じ自分として存在し続けています。
街や風景も同じではないでしょうか。
建物や住む人は少しずつ変わっていく。そ
れでも、その場所に愛着を持ち、庭を手入れし、季節を楽しみ、人と人がゆるやかにつながっていれば、その風景は生き続けます。
変わらないことではなく、変わりながら受け継がれていくこと。
それこそが、私たちが考える「風景を未来へつなぐ」ということです。

さらに、心地よい風景には人を惹きつける力があります。
大きな木陰に自然と人が集まるように、居心地のよい環境は、人との出会いや会話を生み出します。
快適な住まいは、高性能な建物だけでは完成せず、外の緑や木陰、風が抜ける庭、季節を感じられる風景があってこそ、本当の心地よさが生まれます。
ここで暮らす時間や、人とのつながり、育まれていく風景。
そんな暮らしの意味に共感してくださる方が、この場所を選んでくださいました。
風景は、誰か一人が守るものではありません。
そこに暮らす人、一人ひとりが少しずつ関わることで、次の世代へ受け継がれていくものです。
