緑の街づくり

土地を本質的にいかす事。
建築から生まれる良好なコミュニティとは何か。
建築や不動産を通して日々向き合っております。
経堂の杜
先日、駅から徒歩数分、見上げるほどのケヤキの木々。それに寄り添うように佇む低層の共同住宅「経堂の杜 / 2000年竣工」を訪ねました。
以前参加していた「次世代まちづくりスクール•甲斐ゼミ」や「木造ドミノ研究会」、「書籍•不動産の価値はコミュニティで決まる / 著:甲斐徹郎」でも取り上げられていた経堂の杜。いつか訪ねてみたいと思っていた場所でした。ここは、甲斐さん率いるチームネットが手がけたコーポラティブハウスです。
木々に囲まれた共同住宅は、一目で全貌がわからないワクワク感があります。建物の周りをぐるりと歩くと大きなリビングの窓を全開にして窓辺に腰をかける住人の姿がありました。周囲の木々が程よく外からの視線を抑え、窓の角度も道路と並行でないため、互いに気になりません。
また、外からの視線を気にするよりも自分たちがポカポカ陽気を楽しみたいという大らかさを感じます。
甲斐さんにご案内いただき、屋上を見学。
そこには富士山が一望できる風景とDIYで造られたベンチ、パーゴラ、畑、住人がやりたいことを実現できる「とっておきの場」がありました。当日は他の住人の方にお会いすることは無かったですが、空間を見るだけで暮らしが想像できるほどの大人の自由が詰まっていました。
土地の成り立ちを活かし、寄り添うように建築をつくり、それに共感する人たちが集まり、程よい距離感を保ちながら楽しむことで相乗効果が生まれ、更なる価値が生まれる共同住宅だと思います。
土地の成り立ちを残すことは、建築に携わる人だれもが一度はできたら良いなと考えますが、利回りや建築コスト、施工性など理由を付けて結局伐採してしまうケースがほとんどです。それを一本だけでなく敷地を囲むように樹齢100年以上のケヤキの木々を残した経堂の杜は、時をつなぐという強い意志と、それによる恩恵を伝え続けることで、多くの人が共感し、楽しみながら守り、今もなお美しい変化を続けるのだと感じました。
また、その根幹が伝わっていれば細かいルールを設けず、一本の筋道だけ線を引くことで、それぞれが穏やかに蛇行しながら時を重ねるほどに幅広く太い線が生まれ、地域の価値となっていくのではないかと感じました。
私たちも、このような後世に残したくなる街づくりに努めて参ります。
